概要

設計リソース

設計/統合ファイル

  • Schematic
  • Bill of Materials
  • Gerber Files
  • PADS Layout Files
  • Assembly Drawing
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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-CN0357-PMDZ ($111.82) Single-Supply, Toxic Gas Detector, Using an Electrochemical Sensor with Programmable Gain TIA
  • EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
  • SDP-PMD-IB1Z ($64.74) PMOD to SDP Interposer Board
在庫確認と購入

デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

AD778x Linux GitHub Driver Source Code

AD7791 IIO Low Power Sigma-Delta ADC Linux Driver

BeMicro FPGA Project for AD5270 with Nios driver

Digital Potentiometer GitHub Linux Driver Source Code

機能と利点

  • 電気化学センサー
  • 低消費電力
  • 単電源

回路機能とその特長

図1に示す回路は、電気化学センサーを使用する単電源、低ノイズの携帯型ガス検出器です。この例では、Alphasense CO-AX一酸化炭素センサーを使用します。

電気化学センサーには、有毒ガスの濃度を検出または測定する機器に適した数多くの利点があります。大部分のセンサーは対象となるガスが決まっており、使用可能な分解能はガス濃度の1 ppm未満です。

図1に示す回路には ADA4528-2が使われています。このデバイスは、デュアル・オートゼロ・アンプで、室温での最大オフセット電圧は2.5 μV、電圧ノイズ密度はクラス最高レベルの5.6 μV/√Hzです。さらに、材料構成を変えずに異なるガス・センサー・システムのラピッド・プロトタイピングができるように、固定トランスインピーダンス抵抗ではなく、AD5270-20 プログラマブル・レオスタットを使用しています。

ADR3412 高精度低ノイズ・マイクロパワー・リファレンスは、0.1%の精度と8 ppm/°Cのドリフトで1.2 Vのコモンモード疑似グラウンド・リファレンス電圧を提供します。

ppm単位のガス濃度の測定が重要なアプリケーションでは、ADA4528-2とADR3412を使用することで、AD7790 などの16ビットADCへの接続に適した回路性能が得られます。 

図1. 低ノイズのガス検出回路(簡略図:接続とデカップリングはすべて省略)

 

回路説明

電気化学センサー測定回路の簡略図を図2に示します。電気化学センサーは、メンブランからセンサー内にガスを拡散させ、作用電極(WE)によってガスを検出します。センサーの基準電極(RE)はアンプU2-Aにフィードバックし、U2-Aは対電極(CE)の電位を変化させてWE端子を一定の電位に保ちます。WE端子における電流の方向は、センサー内で発生する反応が酸化か還元かによって決まります。一酸化炭素センサーの場合は酸化反応になります。したがって電流は作用電極に流れますが、そのためには、作用電極に対して対電極が負の電圧となる必要があります(通常は300~400 mV)。異なるタイプのセンサーでも動作するよう十分な余裕を確保するには、CE端子駆動用オペアンプの出力電圧範囲をVREFの約±1 Vとする必要があります(Alphasenseアプリケーション・ノートAN-105-03、Designing a Potentiostatic Circuit、Alphasense, Ltd.)。

Figure 2. Simplified Electrochemical Sensor Circuit

 

WE端子への電流は、ガス濃度1 ppmあたり100 nAです。したがって、この電流を出力電圧に変換するには、入力バイアス電流が極めて低いトランスインピーダンス・アンプが必要です。ADA4528-2オペアンプは、室温における最大入力バイアス電流が220 pAのCMOS入力があるため、このアプリケーションに適しています。

ADR3412 はこの回路に疑似グラウンド・リファレンスを提供し、これによって単電源動作が可能になる一方で、無信号時消費電流が非常に少なくなります(最大100 μA)。

アンプU2-Aは、センサーのWE端子とRE端子の間の電位を0 Vに保つために、CE端子から十分な電流をシンクします。RE端子はアンプU2-Aの反転入力に接続しています。したがって、ここから電流が出たり入ったりすることはありません。つまり、電流はWE端子から入り、ガス濃度に比例して変化することを意味します。トランスインピーダンス・アンプU2-Bは、センサー電流をガス濃度に比例した電圧に変換します。

この回路用に選ばれたセンサーは、Alphasense CO-AX一酸化炭素センサーです。この種の汎用一酸化炭素センサーの標準的仕様を表1に示します。

警告:一酸化炭素は有毒で、濃度が250 ppmを超えると危険です。したがって、この回路のテスト時には細心の注意を払ってください。

Table 1. 代表的な一酸化炭素センサーの仕様
Parameter Value
Sensitivity 55 nA/ppm to 100 nA/ppm (65 nA/ppm typical)
Response Time (t90 from 0 ppm to 400 ppm CO) <30 seconds
Range (ppm) CO, Guaranteed Performance) 0 ppm to 2,000 ppm
Overrange Limit (Specifications Not Guaranteed) 4,000 ppm

 

トランスインピーダンス・アンプの出力電圧は次式で得られます。

CN0357_Image1

ここでIWEはWE端子への電流、RFはトランスインピーダンス帰還抵抗です(図1ではAD5270-20 U3-Bレオスタット)。

CO-AXセンサーの最大応答は100 nA/ppmで、最大入力範囲は一酸化炭素濃度で2000 ppmです。これらの値から最大出力電流は200 μAとなり、最大出力電圧は式2に示すようにトランスインピーダンス抵抗によって決まります。

CN0357_Image2

AD7790のVREFに1.2 Vの電圧を加えると、トランスインピーダンス・アンプU2-Bの出力における使用可能範囲を±1.2 Vとすることができます。トランスインピーダンス帰還抵抗に6.0 kΩの抵抗を使用すると、最大出力電圧は2.4 Vとなります。

一酸化炭素ppm濃度の関数としての回路出力電圧を式3に示します。ここでは、センサーの標準応答を65 nA/ppmとしています。

CN0357_Image3

AD5270-20の公称抵抗値は20 kΩです。抵抗の位置は1024あるため、抵抗ステップ・サイズは19.5 Ωです。AD5270-20の抵抗温度係数は5 ppm/°Cで、大部分のディスクリート抵抗よりも優れています。また、電源電流は1 μAであるため、システム全体の消費電流にはほとんど影響しません。

抵抗R4はノイズ・ゲインを妥当なレベルに維持します。高濃度のガスにさらされる場合、ノイズ・ゲインの大きさとセンサーのセトリング時間誤差とのバランスを図って抵抗の値を決めます。式4に示す例ではR4=33 Ωであり、ノイズ・ゲインは183となります。

CN0357_Image4

トランスインピーダンス・アンプの入力ノイズは、ノイズ・ゲインにより増幅されて出力に現れます。この回路では、センサーの動作周波数が非常に低いため、問題となるのは低周波ノイズだけです。ADA4528-2には0.1 Hzから10 Hzの範囲で97 nV p-pの入力電圧ノイズがあります。したがって、式5に示すように出力におけるノイズは18 μV p-pです。

CN0357_Image5

これは非常に低い周波数の1/fノイズなので、フィルタで除去するのは困難です。しかし、センサー応答も非常に遅いので、カットオフ周波数が0.16 Hzの、周波数が非常に低いローパス・フィルタ(R5とC6)を使用することができます。このような低周波フィルタでも、センサーの応答時間が30秒であることから、センサーの応答に与える影響は無視することができます。

システムのノイズフリー・コード分解能はピークtoピーク出力ノイズから得られます。ADA4528-2の最大出力は2.4 Vであるため、ノイズフリー・カウント数は次のようになります。

CN0357_Image6

ノイズフリー・コード分解能は以下のとおりです。

CN0357_Image7

使用可能な全ADC範囲(±1.2 V)を利用するために、AD8500マイクロパワー、レールtoレール入出力アンプを使用してAD7790の入力を駆動します。全範囲が必要ない場合はAD8500を使わず、代わりにAD7790の内蔵バッファを使用することができます。

電気化学センサーの重要な特性のひとつは、時定数が非常に長いことです。最初の電源投入時は、出力が最終的な値に落ち着くまでに数分間かかることがあります。濃度が中程度の対象ガス内にセンサーを置いた場合、センサー出力がその最終値の90%に達するまでに要する時間は、25秒から40秒程度に達することもあります。RE端子とWE端子の間の電圧の大きさが突然変化した場合は、センサーの出力電流が落ち着くまでに数分間かかります。この長い時定数は、センサーへの電源をオン/オフした場合にもあてはまります。スタートアップ時間が極端に長くなるのを避けるために、電源電圧がJFETのゲート/ソース閾値電圧(約2.0 V)未満に低下すると、PチャンネルJFET Q1がRE端子とWE端子を短絡します。

バリエーション回路

電気化学センサーは極めて少量の電流で動作するため、携帯型のバッテリ駆動機器に適しています。消費電力をさらに低く抑える必要がある場合はADA4505-2アンプが適しています。このアンプは最大入力バイアス電流が2 pAで、アンプあたりの消費電流はわずか10 μAです。ただし、ADA4505-2はADA4528-2よりもノイズが大きくなります。

ADR291高精度電圧リファレンスの消費電流はわずか12 μAであり、低消費電力が求められる場合はADR3412の代わりに使用することができます。

詳細については回路ノートCN-0234をご覧ください。

回路の評価とテスト

図1に示す回路は、 EVAL-CN0357-PMDZ 回路評価用ボード、PMD-SDP-IB1Zインターポーザ・ボード、EVAL-SDP-CB1Z システム・デモンストレーション・プラットフォーム(SDP-B)コントローラ・ボードを使用しています。さらに、EVAL-CN0357-PMDZはPmodフォーム・ファクタで作られているので、あらゆるPmodコントローラ・ボードに接続でき、ラピッド・プロトタイピングが可能です。

CN-0357 評価用ソフトウェア はSDPボードと通信して、EVAL-CN0357-PMDZ回路評価用ボードからのデータを取り込みます。


Equipment Needed

CN-0357回路の評価には以下の装置が必要です。

  • Windows® XP、Windows Vista(32ビット版)、またはWindows 7(32ビット版)搭載のUSBポート付きPC
  • EVAL-CN0357-PMDZ評価用ボード
  • PMD-SDP-IB1Zインターポーザ・ボード
  • EVAL-SDP-CB1Zコントローラ・ボード
  • CN-0357評価用ソフトウェア
  • キャリブレーション・ガス(250 ppm未満)
  • EVAL-CFTL-6V-PWRZまたは同等の6 VDC電源 


測定の準備

CN-0357評価用ソフトウェアのディスクをPCのCDドライブに挿入し、評価ソフトウェアをロードしてください。マイ・コンピュータを使用して評価ソフトウェアCDがセットされたドライブを見つけ、setup.exeを実行します。画面に表示されるメッセージに従って評価用ソフトウェアをインストールし、使用してください。


機能ブロック図

テスト・セットアップの機能ブロック図を図3に示します。CN-0357 設計支援パッケージには、評価用ボードの完全な回路図のほか、ガーバー・ファイルやBOMが含まれています。

図3. テスト・セットアップ機能ブロック図

 

セットアップ

EVAL-CN0357-PMDZ回路評価用ボードのソケットに電気化学センサーを接続します。

EVAL-CN0357-PMDZをインターポーザ・ボードに接続し、インターポーザ・ボードのジャンパが+3.3 V用に設定されていることを確認します。次にSDP-Bボードをインターポーザ・ボードに接続し、DCバレル・ジャックを介してインターポーザ・ボードに電源を供給します。

SDP-Bボード付属のUSBケーブルをPCのUSBポートとSDP-Bボードに接続します。

デバイス・マネージャにAnalog Devices System Development Platformが表示されていれば、ソフトウェアとSDPボードは通信可能です。USB通信が確立されていれば、SDPボードを使用してEVAL-CN0357-PMDZ回路評価用ボードへのシリアル・データの送信、受信、取り込みを行うことができます。


テスト

CN-0357評価用ソフトウェアのインストール場所へ移動してCN0357.exeファイルを開きます。(このファイルはオペレーティング・システムのスタート・メニュー内のAnalog Devicesというフォルダ内に置きます。)

アプリケーションを起動すると、ソフトウェアは自動的にSDP-Bボードに接続します。複数のSDP-Bコントローラ・ボードが接続されている場合は、選択したボードのLEDが点滅します。

CN-0357評価用ソフトウェア・ユーザー・ガイドには、評価用ソフトウェアを使用してデータを取り込む方法に関する情報と詳細が記載されています。

このボードの入力信号はガス濃度です。したがって、キャリブレーション・ガス源が必要です。一酸化炭素を使用してテストを行う場合は、250 ppmが短時間曝露限界である点に留意してください。

このソフトウェアはあらゆる電気化学センサーを使用できるように設計されているため、選択したセンサーに合った正しい仕様を入力することが重要です。

AD5270-20デジタル・レオスタットの抵抗を計算して設定するには、最大センサー感度とセンサー範囲が必要です。この値は符号付きの値です。電流をシンクするセンサーには正の値、電流をソースするセンサーには負の値が使われます。

システム変換係数(ppm/mV)の計算にはセンサー感度の代表値を使用します。

Runボタンをクリックすると、1秒間隔で濃度データの収集を開始します。

図4は175 ppm COの雰囲気中から急にセンサーを取り出した後の回路応答を示したもので、この回路の性能を良く表しています。

EVAL-CN0357-PMDZボードの写真を図5に示します。

図4. 一酸化炭素濃度が175 ppmから0 ppmに突然変化したときの応答

 

図5. EVAL-CN0357-PMDZ評価用ボード