高効率電圧スプリッタを形成する電圧インバータIC

「電圧スプリッタ」として構成したスイッチドキャパシタ電圧インバータ(図1のIC1)は、1つ以上のデュアル電源ICを特長とする単一電源システムに便利な、バイポーラ(デュアル電源)ローカル電源を提供します。さらに、小型SOT23パッケージおよび関連部品が占めるボード面積は、非常に小さくなっています。

図1. このコンパクトで効率的なチャージポンプ回路は、単一電源システムでローカルデュアル電源を実現します。

図1. このコンパクトで効率的なチャージポンプ回路は、単一電源システムでローカルデュアル電源を実現します。

電源を入れると、フライングコンデンサ(C2)が、蓄積コンデンサC3/C4およびC5/C6に交互に接続します。この動作によってこれらのコンデンサの電圧が等価となり、VOUT ≈ ½VINを維持するために必要な電流がVINまたはVOUTから消費されます。

VINとVOUTの間およびVOUTと0Vの間の負荷が等しい時は、ICが休止状態になり、自己消費電流が約36µAに低下します。VOUTを電源電圧の中間レベルに維持するためにフライングコンデンサに必要な電流は、負荷の差による差電流だけです。負荷電流が100µA以下の場合は、ICの自己消費電流によって効率が低下しますが、1mA以上では、90%以上の効率が達成できるため、低電力またはバッテリ駆動アプリケーションに最適です。(電圧誤差および効率は、図2および図3に示すように負荷電流によって異なります。)

図2. 図1の出力電圧誤差は、負荷電流に伴なって増大します。

図2. 図1の出力電圧誤差は、負荷電流に伴なって増大します。

図3. 効率も、図1の負荷電流に伴なって増大します。

図3. 効率も、図1の負荷電流に伴なって増大します。

このスイッチドキャパシタ回路は、一般の分圧器よりもレギュレーションに優れ、分圧器とオペアンプバッファを組み合せた場合よりも高い効率を達成します。主な欠点は、負荷に伴なって出力ノイズが増大することです(表1参照)。VINは(IC仕様によって)最大5.5Vに制限されています。つまり、これがピン2と4の間またはピン1と4の間に許される最大電圧になります。

RLOAD
(Ω)
INPUT CURRENT
(µA)
VOUT
ERROR
(mV)
OUTPUT
CURRENT
(µA)
RIPPLE
(mVP-P)
EFFICIENCY
(%)
36.5
10M 36.5 0.25 0.34
10M 37.7 2.5 3.32
100k 48.9 0.1 25 25.56
10k 156 1.4 250 ~1 80.04
1k 1240 13.5 2490 ~5 99.72
470 2630 28.5 5260 ~8 98.83
100 11,410 126.9 23,700 ~30 98.71

同様のアイデアが「EDN」の1997年8月1日号に掲載されました。