+2.7Vで動作する調整不用の傾斜計

1998年07月09日

図1は、センサ(SN1)に電解液を充満した傾斜計(傾斜測定回路)です。ポテンショメータとして動作するこの傾斜計は、中央の電極の傾斜に比例する電圧を発生します。この液体は電気分解に影響するため、センサのフォーシング電圧は平均DC成分がゼロのACであることが必要です。IC1は、マイクロコントローラ(µC) IC2用のセンサ出力をディジタル化する、8チャネル、12ビットアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)です。

図1. この傾斜センサは簡単で正確なだけでなく、安価で調整も必要ありません。

図1. この傾斜センサは簡単で正確なだけでなく、安価で調整も必要ありません。

この種のセンサを処理するための回路は、通常、オペアンプ、アナログスイッチおよびポテンショメータを含みます。ポテンショメータの設定は、時間と温度によってドリフトするため、正確で厳密な処理に基づいて定期的にキャリブレーションを行うことが必要です。図1のアプローチは、このようなキャリブレーションを必要とせず、僅か+2.7Vの単一電源で動作します。

µCの2つのCMOSポートピンは、センサのAC駆動用として、180°逆位相の50Hz方形波を生成します。センサがレベル状態の時は、中央電極の電圧(R3/C4でフィルタリングしてからADCに供給)が、これらの駆動電極範囲(約VCC~0V)の中間になります。各ポートピンには、有限抵抗とそれに起因する電圧降下が存在します。この不正確さは、分圧器R4/R5で駆動信号の中間レベルの電圧をサンプリングし、ADCのチャネル2に供給することによって補償しています。電圧は一定値を保ちますが、中央電極の信号は傾斜方向に従って中間レベルを上下します。

1つのチャネルの傾斜信号および別のチャネルのリファレンス(中間レベル)信号は、ADCでディジタル化してµCに供給します。AC駆動は各極性で10msドウェルし、A/D変換前の12ビットセトリングに対して約9つの時定数を許容します。コンバータの擬似差動入力は、これらの信号の絶対値(~½VCC)をネゲート(否定)します。従って、(チャネル1に対し)チャネル0の量と極性は、傾斜の大きさと方向を示します。傾斜測定は比率計量に基づいているため、電源の大きな変化による影響は比較的小さくなっています(電源変化1ボルト当たりフルスケールの0.2% (typ))。

測定は、連続する2回のハーフサイクルから成り、µCはまず「センサ値- リファレンス値」を計算し、次に逆の位相駆動信号を供給して「リファレンス値-センサ値」を計算します。これらの値を引算すると、希望する傾斜値を2倍した値が得られるため、オフセットを取り消すことによってヌル調整する必要がありません。得られた値は、2の補数量としてソフトウェアで扱い(マキシムのホームページjapan.maximintegrated.comの「その他のソフトウェア」のソフトウェアリスト「調節不要な傾斜計(Adjustment-Free Inclinometer)」を参照してください)、整数として液晶ディスプレイ(LCD)に表示します。(このシステムのディスプレイはデモ用です。)

その他の観測

このシステムは、提供ソフトウェアには導入されていませんが、超低消費電力動作が可能になっています。変換処理を行っていない時は、IC1をシャットダウンすることができ、このモードでの消費電流は僅か10µAに低下します。但し、IC1のシャットダウン中は、µCポートのピン12と13をローに設定し、DC電流によるセンサの損傷を防ぐことが必要です(最大許容DC電流については、センサのデータシートを参照してください)。µCの内部ウォッチドッグは、新規測定用として約1秒毎にウェイクアップすることができます。また、1秒当たりの測定数が2~3の場合、LCDをマキシムのMAX7211と置き換えることにより、全体的な消費電流を100µAに低減できます。

上に述べた技法は殆どのµCやマイクロプロセッサ(µP)とコンパチブルですが、µPの中には、出力構造がMicrochip PIC™と異なるものもあります。例えば8051の場合、その殆どにオープンドレイン出力とプルアップ抵抗があり、ポートピンのソースおよびシンク電流に不一致が発生します。このようなµPは、ポートピンとセンサの間に外部CMOSインバータを接続し、動作の信頼性を確保することが必要です。センサのDC電流を最小化するために、起動時の初期化とパワーダウン条件を慎重に設計することが必要です。

最後に、もう1組の駆動電極用として2つのポートピンを追加することにより、これらの技法をデュアル軸センサ用に拡張することも可能です。この場合測定方法は同じですが、各軸のセンサピンは、測定を実行しながら交互にスリーステートに設定すること が必要です。これにより、一般のアナログ技法では困難な交差軸インタラクションの最小化が達成できます。

関連したアイデアがEDNの4/24/97号に掲載されました。



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