Customer Case Study
IOXUS製のウルトラキャパシタ「uSTART」、車載バッテリの性能向上に貢献
概要
自動車では、モータの始動と停止が絶えず繰り返されます。それに伴い大量の燃料が消費され、短期間のうちにコンポーネントが劣化することになります。本稿では、IOXUS製のウルトラキャパシタ・モジュール「uSTART®」を紹介します。これをバッテリと組み合わせれば、モータの始動時/停止時に多くの電力を供給することができます。それにより始動/停止に伴う燃料の消費量が削減され、コンポーネントの劣化が緩和されます。その結果、システム全体の性能を向上することができます。
はじめに
トラックや乗用車、クレーンのような大出力のモーション・マシンは、始動、停止、再始動の動作を繰り返します。つまり、始動、停止、始動、停止という動作が延々と繰り返されるということです。一般的な自動車が始動する際には、アイドリングの状態にある場合の10倍の電力が消費されます。また、そうしたマシンは、油圧ポンプを使用する際などに最大限の出力を必要とします。そのことが、消費電力が不均一になる要因になっています。そうしたマシンを厳しい環境で動作させ続けると、燃料の消費量の増大、システムの摩耗、コンポーネントの疲弊が生じます。つまり、ほとんどの場合は燃料の消費量が増え、故障の頻度が高まり、保守コストが増大するということです。しかし、このようなパラダイムは、ある革新的な企業によって覆されました。その企業は、自動車や大型機械向けの高度なウルトラキャパシタによって、多くのエネルギーを供給/貯蔵する手段を提供します。それにより、システムの性能を高めることができます。
モータの始動/停止の繰り返し、それに伴う 課題を解消するIOXUSのソリューション
IOXUSは、ウルトラキャパシタのセル/モジュールの製造分野を牽引する大手企業です。本稿では、同社の革新的なウルトラキャパシタ・モジュールである「uSTART」を紹介することにします。uSTARTは、自動車、輸送機器向けの技術である「Smart Power」をベースとしています。このモジュールは、従来のバッテリと組み合わせることによって大きなメリットをもたらします。そのようにすることで、ウルトラキャパシタの長所を活かしたハイブリッド型の電気システムが実現されるのです。図1に示したように、uSTARTは車載バッテリと並列に接続して使用します。同モジュールは、ウルトラキャパシタならではの高速な放電性能を備えています。それを利用して、始動(クラッキング)時をはじめ、消費電流が多くなるあらゆる状況に対応して大電流を供給します。一方、バッテリは電流に関する条件が緩い際に電力の供給源として機能します。また、オルタネータと併用することで、uSTARTを充電する役割も果たします。uSTARTは、能動的に車載バッテリのエネルギー・プロファイルを管理します。それにより、あらゆる動作条件の下で安定した電圧が供給されることになります。
ウルトラキャパシタは、広範な分野に対してメリットをもたらします。最も重要なのは、uSTARTから大電流を供給することにより、1次電圧のトランジェントを防止できるということです。この安定性は、システム全体の摩耗を抑える効果をもたらします。その結果、コンポーネントを取り替えることなく、自動車の稼働期間を延ばすことが可能になります。過電圧、低電圧ならびに不適切な電流を避けられることから、スタータ・モータの磁石、巻線と、バッテリの化学的性質も守られます。従って、稼働期間をかなり長く延ばすことが可能になります。また、回生ブレーキ・システムにもメリットがもたらされます。ウルトラキャパシタであれば、広範な電力レベルにわたって充電に対応できるからです。加えて、電気システム全体の小型化も実現されます。これらのメリットにより、原材料に対する需要(生産量や消費量)を抑えることができます。レア・アースや貴重な元素への依存度を低減することも可能になります。更なるメリットとして、ウルトラキャパシタ用のカーボンは、再生可能な天然資源から得られるという点が挙げられます。

但し、上に列挙した長所は、開発を容易にするという性質のものではありません。多くの課題が存在するなか、Smart Power技術を採用した製品は、始動のようなイベントが発生した状況で需要を検出して対応を図ります。また、バッテリの充電を管理する役割も担い、システム全体にわたって電力の管理を行います。始動のようなイベントが生じると、数ミリ秒以内といった短時間でエネルギーをソース/シンクしなければなりません。そうした機能を開発する際には、負荷に関する多くのシナリオに対応し、複雑なゲートのアレイを一貫して制御できるようにする必要があります。電磁干渉(EMI:Electromagnetic Interference)も課題の1つです。車載環境では、システムの電圧に非常に大きなノイズが加わることがあります。プラスとマイナスの電圧トランジェントがバッテリの電圧の数倍のレベルに達することも珍しくありません。それ以外にも、設計上の課題は存在します。例えば、自動車メーカーは、広帯域の無線スペクトルを対象とし、電磁環境適合性(EMC:Electromagnetic Compatibility)を満たすためにエミッションに関する厳しい条件を満たさなければなりません。加えて、化学的な性質や材料の接続などについても、不要な抵抗成分を排除し、電力をスムーズにソース/シンクできるようにする必要があります。なお、IOXUSの製品群は、電極とウルトラキャパシタの化学組成に関する数多くの特許技術が適用されていることを特徴とします。

IOXUSは、パワー・マネージメント・システムを開発するにあたってアナログ・デバイセズと提携しました。開発するシステムには、ウルトラキャパシタの充電管理、保護、アイソレーション、システム管理などを実現する機能が必要でした。アナログ・デバイセズが提供した製品の一例としては、昇降圧コントローラ「LT8390」が挙げられます。同ICは、0Vから設定された値まで、ウルトラキャパシタを効率的に充電するための電流量とタイミングを管理します。また、スペクトラム拡散周波数変調(SSFM:Spread Spectrum Frequency Modulation)機能を備えているため、関連するシステムのEMC性能に影響を及ぼす無線周波数帯の放射エミッションを低減することができます。他の例としては、同期整流方式の降圧レギュレータ「LT8609S」が挙げられます。同ICは、システムの内部で動作し、制御用の電子回路に対して、非常に安定した電圧を効率的に供給します。加えて、保護用コントローラの「LTC4368」は、LT8390に対して過電圧、低電圧、逆電流に対する保護機能を提供します。更に、電流リミッタの「MAX17613」は、LT8609Sや制御用の低消費電力の電子回路に対して同様の機能を提供します。車載パワー・マネージメント・システムの中には、複数のHブリッジドライバ「MAX253」と絶縁型ゲート・ドライバ「ADuM4221」を採用しているものもあります。それらにより、パワー・トランジスタのバンクを切り替え、負荷に対して動的に応答することで、フロート電圧に近づくことを回避します。
IOXUSでシニア・エレクトリカル・エンジニアを務めるJoe Agrelo氏は、「最新のシステムを設計する際、アナログ・デバイセズのようなパートナーが得られることは非常に有意義なことです。同社は、高性能の製品と電力分野に関する豊富な専門知識を有しています。そのため、パートナーとして多大な貢献を果たしてくれます」と述べています。
まとめ
自動車では、モータの始動と停止が絶えず繰り返されるため、燃料の消費量の増大やコンポーネントの摩耗といった問題が生じます。IOXUSのuSTARTは、そうした難題を解消してくれる優れた製品です。これを採用すれば、エネルギーの消費量を削減しつつ、システムの性能を高めることができます。モビリティの分野では、今後、更に厳しい要件が課せられることになるでしょう。そうした状況に対応するためには、IOXUSのuSTARTのような新たなソリューションが必要になります。