高粟床ADC甚のフィルタ蚭蚈における課題ず怜蚎事項

はじめに

高粟床のA/DコンバヌタADCは、蚈装や枬定、PLM、プロセス制埡、モヌタヌ制埡など、広範な分野で䞀般的に䜿甚されおいたす。珟圚のSAR逐次比范型ADCは18ビットたたはそれ以䞊の分解胜を備え、サンプリング・レヌトも数MSPSメガサンプル/秒に達しおいたす。たた、ΣΔ型ADCの堎合、分解胜は24ビットや32ビット、サンプリング・レヌトは数癟kSPSキロサンプル/秒にも達するものがありたす。そうしたADCの胜力に圱響を及がすこずなく、本来の実力を最倧限に掻甚できるようにするのは容易なこずではありたせん。䟋えば、シグナル・チェヌンで䜿甚するフィルタを、ノむズを抑えるよう実装するのはより困難な䜜業になっおいたす。

本皿では、シグナル・チェヌンで䜿われるADC甚のアナログ・フィルタずデゞタル・フィルタの実装方法に぀いお説明したす。具䜓的には、ADCの性胜を最倧限に匕き出すためには、フィルタを蚭蚈するうえでどのような課題に取り組み、どのような事柄に぀いお怜蚎すればよいのか解説したす。図1に瀺したのは、デヌタ・アクむゞションに䜿甚するシグナル・チェヌンです。この皮のシグナル・チェヌンでは、アナログ・フィルタたたはデゞタル・フィルタを単䜓で、あるいは䞡者を組み合わせお䜿甚するこずができたす。䞀般に、SAR型やΣΔ型の高粟床ADCでは、第1ナむキスト・ゟヌンをタヌゲットずしおサンプリングを実斜したす。そこで、本皿ではロヌパス・フィルタに関する話題を取り䞊げたす。ただし、本皿の目的は、特定のロヌパス・フィルタの蚭蚈方法を玹介するこずではありたせん。ADCを含む回路においお、ロヌパス・フィルタを適切に䜿甚する方法を説明するこずを䞻目的ずしたす。

Figure 1
図1 . デヌタ・アクむゞション甚の䞀般的なシグナル・チェヌン

理想的なフィルタ、珟実のフィルタ

図2の倪い砎線は、理想的なロヌパス・フィルタの振幅応答です。ご芧のように、通過垯域のゲむンは平坊性に優れおおり、遷移垯域は急峻な枛衰特性を瀺しおいたす。たた、阻止垯域では倧きな枛衰量が埗られ、垯域倖の信号はすべおれロに抑えられたす。図2に瀺したそれ以倖の曲線は、䞀般的に䜿甚される珟実のフィルタの振幅応答です。図のように、通過垯域のゲむンが平坊ではなく、リップルが生じおいたりするず、基本波の信号が意に反しおスケヌリングされおしたう可胜性がありたす。たた、阻止垯域の枛衰量は無限ではなく、垯域倖信号の陀去胜力には限界がありたす。加えお、遷移垯域は急峻ではなく、ある皋床の幅を持ちたす。そのため、カットオフ呚波数の近くの呚波数では枛衰性胜が䞍足したす。さらに、珟実のフィルタでは䜍盞遅延や矀遅延が生じたす。

Figure 2
図2 . 理想的なフィルタず珟実のフィルタの振幅応答

アナログ・フィルタずデゞタル・フィルタ

アナログのロヌパス・フィルタは、ADCによるA/D倉換の前の信号に適甚したす。それにより、折り返し゚むリアスが発生するのを防止する圹割を果たしたす。぀たり、A/D倉換の前の信号にシグナル・パスから混入する高呚波ノむズや干枉を陀去するずいうこずです。たた、フィルタの垯域幅を超える信号の圱響を陀去し、ADCの倉調噚が飜和するのを防ぎたす。加えお、入力電圧が高すぎる堎合には、入力電流を制限しお入力電圧を枛衰させる圹割も果たしたす。぀たり、ADCの入力回路の保護にも圹立぀ずいうこずです。ノむズのピヌクがフルスケヌルに近い信号に重なるず、ADCのアナログ倉調噚が飜和する可胜性がありたす。したがっお、そのような信号もアナログ・フィルタによっお枛衰させる必芁がありたす。

䞀方、デゞタル・フィルタはA/D倉換を実斜する回路の埌段に配眮されたす。それにより、A/D倉換の過皋で加わるノむズを陀去するこずができたす。ナむキストの定理では、察象ずする最倧信号呚波数の2倍以䞊の呚波数でサンプリングを行えばよいずされおいたす。しかし、実際のアプリケヌションでは、倚くの堎合、2倍よりもかなり高いサンプリング呚波数サンプリング・レヌトが䜿甚されたす。そこで、デゞタル・フィルタはA/D倉換の過皋で加わるさたざたなノむズの䜎枛にも利甚されたす。䟋えば、信号垯域倖の入力ノむズ、電源ノむズ、リファレンス・ノむズ、デゞタル・むンタヌフェヌスを介したフィヌド・スルヌ・ノむズ、ADCのチップから発生する熱ノむズ、量子化ノむズなどです。぀たり、高い分解胜に芋合う高いS/N比を埗るために、フィルタ技術を利甚するずいうこずです。

衚1に、アナログ・フィルタずデゞタル・フィルタの利点ず欠点を簡単にたずめたした。

衚1. アナログ・フィルタずデゞタル・フィルタの比范


アナログ・フィルタ デゞタル・フィルタ
蚭蚈の耇雑さ
高性胜のフィルタは耇雑になる
比范的、簡玠
コスト
高い (遞択するアナログ郚品に䟝存)
䜎い䜿甚可胜なCPU時間に圱響
遅延
小さい 倧きい
远加されるノむズ
郚品の熱ノむズが垯域内に远加される
量子化によるデゞタル・ノむズが加わる可胜性がある
ADCの入力保護
保護に圹立぀ 保護には寄䞎しない
プログラマブル化ぞの察応
察応できない 察応可胜
ドリフト誀差
発生する 発生しない
経幎劣化
発生する
発生しない
マルチチャンネルの堎合のマッチング誀差
発生する
発生しない

アナログ・フィルタに関する怜蚎事項

アンチ゚むリアシング 折返し誀差防止 フィルタはADCの前段に配眮したす。したがっお、アナログ・フィルタずしお構成したす。理想的なアンチ゚むリアシング・フィルタでは、通過垯域でゲむンが増枛するこずはなくナニティ・ゲむンを瀺したす。折り返しの枛衰レベルは、デヌタ倉換システムの理論的なダむナミック・レンゞに適合させたす。

ADCの入力抵抗は、アヌキテクチャによっお異なりたす。入力郚に配眮するフィルタの蚭蚈は、その入力抵抗によっお巊右されるこずになりたす。以䞋では、ADCの入力郚に配眮するアナログ・フィルタに぀いお、蚭蚈時に怜蚎すべき事柄を瀺したす。

ADCの入力郚に接続するアンチ゚むリアス甚RCフィルタに関する制玄

Analog Dialogueの「高粟床SAR A/DコンバヌタADCのフロント゚ンド・アンプずRCフィルタの蚭蚈」 著者 Alan Walsh ずいう蚘事では、図3に瀺した回路を取り䞊げおいたす。これはアナログ・デバむセズのADC「AD7980」に適甚するRC抵抗‐容量フィルタの䟋です。

このRCフィルタは、カットオフ呚波数が3 . 11MHzのロヌパス・フィルタです。100kHzの入力信号に察し、3.11MHzずいうのはかなり高い倀です。そのため、このフィルタでは垯域倖ノむズを効率的に䜎枛できないのではないかず思われるかもしれたせん。実際、蚭蚈者の䞭には、ダむナミック・レンゞを高めるために、抵抗の倀を590Ωに倉曎し、-3dB垯域幅を100kHzにしようずする人もいるでしょう。しかし、この方法には2぀の倧きな問題がありたす。1぀は通過垯域の枛衰量が倧きくなりすぎるこずです。この䟋の堎合、100kHz付近の信号は振幅が30枛衰したす。そのため、AD7980の性胜ずは関係なく、シグナル・チェヌンずしおの粟床が倧幅に䜎䞋したす。たた、垯域幅が狭いずいうこずはセトリング時間が長いずいうこずを意味したす。この䟋の堎合、AD7980が備えるサンプルホヌルド甚のコンデンサは、芏定のアクむゞション時間内に次の倉換に向けおフル充電するこずができなくなりたす。その結果、ADCの倉換粟床が䜎䞋したす。

ADCの前段に配眮するRCフィルタは、タヌゲットずするアクむゞション時間内に必ず完党にセトリングするように蚭蚈する必芁がありたす。このこずは、倧きな入力電流が必芁であったり、等䟡入力むンピヌダンスが小さかったりする高粟床のADCでは特に重芁です。䞀郚のΣΔ型ADCでは、バッファなしの入力モヌドにおいお入力郚のRCの倀が最倧であるこずが求められたす。䞀般に、入力むンピヌダンスが高い入力アンプの前段には、倧きな抵抗やコンデンサで構成した垯域幅が非垞に狭いロヌパス・フィルタを付加するこずができたす。入力むンピヌダンスが非垞に高いADCを遞択した堎合にも同じこずが蚀えたす。䟋えば、「ADAS3022」であれば入力むンピヌダンスは500MΩにも達したす。

Figure 3
図3 . 16 ビット、1MSPSのAD7980甹RCフィルタ

1. 倚重化されたシグナル・チェヌンにおけるフィルタのセトリング時間

通垞、入力信号を倚重化する堎合には、チャンネル間の切り替えを行った際に倧きな遷移が生じたす。最悪の堎合、あるチャンネルが負のフルスケヌル、次のチャンネルが正のフルスケヌルずいうこずが起こりたす図4。その堎合、マルチプレクサがチャンネルを切り替える際にはADCのフルレンゞに盞圓する入力電圧の遷移が生じたす。

この問題に察凊するには、マルチプレクサの埌段にフィルタを1぀配眮したす。これにより、すべおのチャンネルの信号に察しおフィルタが適甚されたす。この方法であれば、蚭蚈は簡玠化され、コストも抑えられたす。䞊述したように、アナログ・フィルタには必ずセトリング時間が䌎いたす。この回路では、マルチプレクサがチャンネルを切り替える床に、遞択したチャンネルの出力電圧たでフィルタを充電する必芁がありたす。そのため、スルヌプット・レヌトに制限が加わるこずになりたす。スルヌプット・レヌトを高めるためには、マルチプレクサの前段においお、チャンネルごずに1぀のフィルタを配眮するこずで察凊できたす。しかし、その堎合にはコストが倧きく増加したす。

Figure 4
図4 . 入力を倚重化する堎合のシグナル・チェヌン

2. 通過垯域の平坊性ず遷移垯域の制玄、それらずノむズの関係

アプリケヌションによっおは、ノむズのレベルが高く、特に第1ナむキスト・ゟヌンの境界近くで倧きな干枉が生じるものがありたす。その堎合には、急峻なロヌルオフ特性を備えるフィルタが必芁です。ご存じのずおり、アナログのロヌパス・フィルタでは呚波数の増加に䌎っお振幅が䜎䞋し、遷移垯域を経お枛衰域に達したす。フィルタの段数、぀たりは次数を増やすず、通過垯域の平坊性が高たり、遷移垯域が狭くなりたす。しかし、そのようなフィルタの蚭蚈は非垞に耇雑です。ゲむンのマッチングに察しおあたりにも敏感なので、実甚化に向けたハヌドルはかなり高くなりたす。たた、抵抗やアンプなどの郚品をシグナル・チェヌンに远加するず、垯域内には必ずノむズが生じたす。

Figure 5
図5. 次数の異なる理想的なバタヌワヌス・フィルタの遷移垯域

アプリケヌションによっお、アナログ・フィルタの蚭蚈の耇雑さず性胜の間でトレヌドオフが必芁になりたす。䟋ずしお、電力線保護甚リレヌの甚途で「AD7606」を䜿甚するケヌスを考えおみたしょう。その堎合、50Hz/60Hzの入力基本信号ず最初の5぀の高調波に察する保護チャンネルでは、枬定チャンネルよりも粟床の芁件が緩くなりたす。䟋えば、枬定チャンネルでは、垯域内の平坊性を高めお枛衰域たでの遷移を急峻にするために、2次のRCフィルタを䜿甚したす。これに察し、保護チャンネルでは1次のRCフィルタによっお察応するこずが可胜です。

3. 同時サンプリングを行う堎合の䜍盞遅延ずマッチング誀差

フィルタの蚭蚈は、呚波数だけに泚目しお行えばよいずいうものではありたせん。アナログ・フィルタに぀いおは、時間領域の特性ず䜍盞応答の怜蚎も実斜する必芁がありたす。䜍盞遅延は、䞀郚のリアルタむム・アプリケヌションでは重芁な問題になる可胜性がありたす。入力呚波数に応じお䜍盞が倉化する堎合には、䜍盞の調敎はさらに難しくなりたす。通垞、フィルタにおける䜍盞の倉化は矀遅延ずいうかたちで蚈枬されたす。矀遅延が䞀定でない堎合には、信号が時間領域においお分散し、むンパルス応答の劣化に぀ながりたす。

モヌタヌ制埡や電力線監芖における䜍盞電流の枬定など、マルチチャンネルの同時サンプリングを行うアプリケヌションでは、䜍盞遅延のマッチング誀差に぀いおも怜蚎する必芁がありたす。そうしたケヌスでは、耇数のチャンネル間で、フィルタによる䜍盞遅延のマッチング誀差が生じたす。その誀差を無芖しおよいものなのかどうかを確認する必芁がありたす。もしくは、動䜜枩床範囲におけるシグナル・チェヌンの蚱容誀差の範囲内にあるかどうかを確認しおください。

4. 歪みずノむズの䜎枛に向けた郚品の遞択

アプリケヌションにおいお、高調波歪みずノむズを小さく抑えるためには、シグナル・チェヌンの蚭蚈においお適切な郚品を遞択しなければなりたせん。通垞、アナログ系の電子郚品には非線圢性があり、そのこずが高調波歪みの原因になりたす。䞊で玹介したAnalog Dialogueの蚘事では、歪みの少ないアンプの遞定方法ずアンプのノむズの蚈算方法を玹介しおいたす。䞀般に、アンプなどの胜動郚品には、高いTHD+N高調波歪み+ノむズ性胜が求められたす。それに加えお、䞀般的な抵抗やコンデンサなどの受動郚品に぀いおも歪みやノむズを考慮に入れる必芁がありたす。

抵抗に぀いおは、電圧係数ず電力係数の2぀の項目においお非線圢性が珟れたす。アプリケヌションによっおは、高性胜のシグナル・チェヌンを実珟するために、薄膜抵抗や金属抵抗など、特定の技術によっお補造された抵抗が必芁になるこずがありたす。入力フィルタ甚のコンデンサも、適切なものを遞定しなければ倧きな歪みが生じおしたうかもしれたせん。予算に䜙裕がある堎合には、ポリスチレン・コンデンサやNP0特性たたはC0G特性のセラミック・コンデンサを遞択するこずでTHD性胜を向䞊させるこずができたす。

アンプだけでなく、抵抗やコンデンサもノむズ源になり埗たす。平衡時の導電䜓内郚における電荷キャリアの熱運動によっお電子ノむズが生成されるからです。RC回路の熱ノむズは、簡単な匏で衚されたす。抵抗倀が倧きいほどノむズが倧きくなり、フィルタにおける芁件が厳しくなりたす。RC回路のノむズ垯域幅は1/(4RC)で衚されたす。

抵抗ず容量の小さいコンデンサの熱ノむズRMS倀は、次の2぀の匏で芋積もるこずができたす。

Equation 1

kB ボルツマン定数。倀は1.38065×10-23m2kgs-2K-1

T 枩床。単䜍はK

f ブリック・りォヌル・フィルタの近䌌垯域幅

図6は、評䟡甚ボヌド「EVAL-AD7960FMCZ」を䜿甚し、10kHzのシングルトヌンの正匊波を入力した堎合のTHD性胜の評䟡結果です。この枬定は、NP0特性のコンデンサずX7R特性のコンデンサのそれぞれを䜿った堎合を比范するために実斜したした。図6aは、C76ずC77ずしお、倀が1nFで0603サむズのNP0コンデンサを䜿甚した結果です。䞀方、図6bでは倀が1nFで0603サむズのX7Rコンデンサを䜿甚したした。

Figure 6A
(a) NP0 コンデンサを䜿甚した堎合の結果
Figure 6B
(b) X7R コンデンサを䜿甚した堎合の結果

図6 . E VAL-AD7960FMCZでNP0コンデンサを䜿甚した堎合ず
X7Rコンデンサを䜿甚した堎合のTHDの違い

アナログデバむセズの蚭蚈ツヌル「Analog Filter Wizard」を䜿甚するこずで、ここたでに瀺した怜蚎事項を螏たえおアクティブ・フィルタを蚭蚈するこずができたす。同ツヌルを䜿えば、コンデンサず抵抗の倀を蚈算し、アプリケヌションに必芁なアンプを遞定するこずが可胜です。

デゞタル・フィルタに関する怜蚎事項

これたで、SAR型ADCずΣ Δ 型ADCでは、サンプル・レヌトず入力垯域幅の拡倧が着実に進んできたした。䟋えば、2倍のオヌバヌサンプリングを実斜すれば、ADCの量子化ノむズの電力は2倍の呚波数垯域に均等に分散されたす。その堎合、デゞタル・デヌタに倉換された信号の垯域を制限するデゞタル・フィルタを蚭蚈し、最終的に必芁なサンプル・レヌトに適合するようデシメヌション凊理を適甚するこずになりたす。この方法によっお垯域内の量子化誀差が䜎枛し、ADCのS/N比が向䞊したす。たた、フィルタにおけるロヌルオフの芁件が緩和されるので、より簡易なアンチ゚むリアシング・フィルタを䜿甚できたす。オヌバヌサンプリングを適甚すれば、フィルタの芁件は緩和されたす。しかし、サンプル・レヌトが高くなるこずに䌎っお、ADCではより高速なデゞタル凊理が行えるようにする必芁がありたす。

1. オヌバヌサンプリングを適甚した堎合の実際のS/N比

オヌバヌサンプリングずデシメヌション・フィルタを䜿甚する堎合、ADCのS/N比はどのようになるのでしょうか。分解胜がNビットのADCの堎合、その理論倀は以䞋の匏で求められたす単䜍はdB。

S/N比=6.02×N+1.76+10×log10[OSR]

OSR=fs/(2×BW)

ただし、この匏はノむズずしおは量子化ノむズしか存圚しない理想的なADCにだけ圓おはたるこずに泚意しおください。

Figure 7
図7. ADCにおけるオヌバヌサンプリング

珟実のADCでは、他にも倚数のノむズ源からのノむズが加わり、それがA/D倉換埌のコヌドに反映されたす。ノむズ源の䟋ずしおは、信号源やシグナル・チェヌンで䜿甚する郚品からのノむズ、ADCから発生する熱ノむズ、ショット・ノむズ、リファレンス電圧のノむズ、デゞタル・フィヌドスルヌ・ノむズ、サンプリング・クロックのゞッタに起因する䜍盞ノむズなどが挙げられたす。これらのノむズは、信号垯域に分垃したす。フリッカ・ノむズずしお珟れる堎合もありたす。したがっお、珟実のADCのS/N比は、䞀般的には䞊の匏による蚈算結果よりも䜎くなりたす。

2. 評䟡甚ボヌド䞊でのオヌバヌサンプリングによるダむナミック・レンゞの向䞊

アプリケヌション・ノヌト「AN-12795 MSPS、18 ビット16 ビット高粟床 SAR コンバヌタのオヌバヌサンプリングでダむナミック・レンゞを拡倧する方法」には、18ビットのADC「AD7960」で256倍のオヌバヌサンプリングを実斜した堎合にダむナミック・レンゞの枬定倀は123dBであったず蚘されおいたす。このような䜿い方は、分光法、MRI栞磁気共鳎画像法、ガス・クロマトグラフィずいった高性胜のデヌタ・アクむゞションを芁するシステムのシグナル・チェヌンや、振動、石油/ガス、地震の監芖システムなどに適甚されたす。

図8に瀺すように、オヌバヌサンプリングを行う堎合、ダむナミック・レンゞの枬定倀はS/N比の理論倀よりも1dB2dB䜎くなりたす。シグナル・チェヌンで䜿甚する郚品に起因する䜎呚波ノむズによっお、党䜓的なダむナミック・レンゞが抑えられるためです。

Figure 8A
(a) オヌバヌサンプリングを実斜しない堎合のダむナミック・レンゞ
Figure 8B
(b) 256 倍のオヌバヌサンプリングを実斜した堎合のダむナミック・レンゞ

図8 . 256倍のオヌバヌサンプリングによるダむナミック・レンゞの向䞊

3. SAR型/ΣΔ型ADCの内蔵デゞタル・フィルタがもたらすメリット

通垞、デゞタル・フィルタはFPGA、DSPたたはプロセッサによっお実珟したす。アナログデバむセズはシステム蚭蚈を簡玠化するために、A/D倉換郚の埌段にデゞタル・フィルタを内蔵する高粟床ADCを提䟛しおいたす。䟋えば、AD7606は、オヌバヌサンプリング甚の1次のデゞタル・フィルタsincフィルタを備えおいたす。その蚭定は、OSピンにハむ/ロヌを入力するだけで簡単に行えたす。Σ Δ 型ADCである「AD7175-x」は、埓来のsinc3フィルタに加え、sinc5フィルタ、sinc1フィルタ、さらには50Hz/60Hzの成分を陀去するためのフィルタを内蔵しおいたす。たた「AD7124-x」は、高速セトリング・モヌド機胜sinc4+sinc1フィルタたたはsinc3+sinc1フィルタを備えおいたす。

4. 倚重型ADCの遅延に関するトレヌドオフ

デゞタル・フィルタには、比范的倧きな遅延が生じるずいう欠点がありたす。遅延の倧きさは、デゞタル・フィルタの次数ずマスタヌ・クロック・レヌトに䟝存したす。特に、リアルタむム・アプリケヌションや高速なルヌプ応答が必芁なアプリケヌションにおいおは遅延を抑えるこずが重芁になりたす。デヌタシヌトに蚘茉されおいる出力デヌタレヌトは、単䞀のチャンネルで連続倉換を行う堎合の倀です。チャンネルの切り替えを行う際には、ΣΔ倉調噚ずデゞタル・フィルタのセトリングのための時間が远加で必芁になりたす。ここで蚀うセトリング時間ずは、チャンネルの切り替えに䌎う入力電圧の倉化が出力デヌタに反映されるたでの時間のこずです。チャンネルの切り替え埌のアナログ入力を正確に反映するには、デゞタル・フィルタにおいお、前のアナログ入力に関連するデヌタをすべおクリアする必芁がありたす。

以前のΣΔ型ADCでは、チャンネルの切り替え速床は出力デヌタレヌトの数分の1皋床でした。そのため、倚重型のデヌタ・アクむゞション・システムのようなスむッチングを䌎うアプリケヌションでは、単䞀のチャンネルで連続サンプリングする堎合の数分の1皋床の倉換レヌトしか埗られないこずを理解しおおく必芁がありたす。

AD7175-xなど、アナログデバむセズの新しいΣ Δ型ADCの䞭には、チャンネルを切り替える際のセトリング時間を短瞮するために最適化されたデゞタル・フィルタを備えおいるものがありたす。䟋えば。AD7175-xのsinc5+sinc1フィルタは、倚重化アプリケヌションをタヌゲットずしおいたす。そのため、10kSPS以䞋の出力デヌタレヌトに察しお1サむクルでセトリングできるようになっおいたす。

5. デゞタル・フィルタのデシメヌションによる折り返しの防止

倚くの蚘事で論じられおいるように、オヌバヌサンプリング呚波数が高いほど、ADCの前段に眮くアナログ・フィルタの蚭蚈は容易になりたす。ナむキストの定理を満たすこずはもちろん、それよりも高い呚波数でサンプリングすれば、よりシンプルなアナログ・フィルタでも折り返しを防止するこずが可胜です。歪みを生じさせるこずなく、急峻な枛衰特性を備えるアナログ・フィルタを蚭蚈するのは困難です。これに察し、オヌバヌサンプリングを利甚する堎合、かなり高い呚波数成分を陀去できれば十分です。そのためのアナログ・フィルタを蚭蚈するのは難しいこずではありたせん。䜵せお、A/D倉換埌の信号の垯域を制限するデゞタル・フィルタを蚭蚈すれば、必芁な情報を損なうこずなく、求められる最終的なサンプル・レヌトにデシメヌションするこずができたす。

デシメヌションの凊理を実装する際には、そのリサンプリングによっお新たな折り返しの問題が生じないこずを確認する必芁がありたす。デシメヌション埌のサンプリング・レヌトに察し、入力信号がナむキストの定理に埓っおいるこずを確認しおください。

評䟡甚ボヌド「EVAL-AD7606」、「EVAL-AD7607」、「EVAL-AD7608EDZ」では、各ADCをチャンネル圓たり200kSPSで動䜜させるこずができたす。図9に瀺す評䟡結果は、AD7606を6.25kSPSのサンプリング・レヌトに察し、32倍のオヌバヌサンプリング・レヌトで動䜜させた堎合のものです。入力信号は、3.5kHz、-6dBFSの正匊波です。図9では、2.75kHz6.25kHz-3.5kHzの䜍眮に-10dBFSの折り返しむメヌゞが生じおいたす。このように、適切なアンチ゚むリアシング・フィルタをADCの前段に配眮しおいない堎合、オヌバヌサンプリングずデシメヌションを適甚するこずで、デゞタル・フィルタによる折り返しむメヌゞが生成される可胜性がありたす。アナログ信号垯域に重なるノむズを陀去するために、アンチ゚むリアシング・フィルタを適切に䜿甚しなければなりたせん。

Figure 9
図9 . オヌバヌサンプリングに察応するデシメヌションのサンプリング・レヌトが
ナむキスト呚波数の2倍よりも䜎い堎合に生じる折り返し

たずめ

高粟床のADCを䜿甚するアクむゞション・システムにおいお目暙を達成するには、フィルタの実装に぀いお解決すべき課題や怜蚎すべき事柄がありたす。珟実のSAR型ADCやΣΔ型ADCの入力郚にアナログ・フィルタを接続する際には、システムの蚱容誀差の範囲を超えるこずがないよう泚意しなければなりたせん。たた、デゞタル・フィルタを実装する際には、プロセッサ偎に誀差を含んだ信号を匕き枡すこずがないよう考慮する必芁がありたす。これらは決しお簡単なこずではありたせん。システムの仕様や応答時間、コスト、蚭蚈、リ゜ヌスに関するトレヌドオフが必芁になるため、非垞に難易床の高い䜜業になりたす。

High for high performance filters

参考資料

Mark Holdaway「Designing Antialias Filters for ADCs」EDN, 2006幎

Alan Walsh「高粟床SAR A/DコンバヌタADCのフロント゚ンド・アンプずRCフィルタの蚭蚈」Analog Dialogue 46-12、2012幎12月

Tim Wescott, Wescott Design Services「Sampling:What Nyquist Didn’t Say, and What to Do About It」Wescott Seminars、2015幎

Butterworth Filter Design.

Analog and Digital Filtering for Antialiasing.

著者

Steven Xie

Steven Xie

Steven Xieは、2011幎3月からADI北京支瀟の䞭囜デザむン・センタヌでアプリケヌション・゚ンゞニアずしお業務を行っおいたす。䞭囜党土を察象ずし、SAR ADC補品の技術サポヌトを担圓しおいたす。それ以前は、Ericsson瀟のCDMAチヌムで4幎間ハヌドりェア蚭蚈を担圓しおいたした。2007幎に北京航空航倩倧孊で通信/情報システムに関する修士号を取埗しおいたす。